人気ブログランキング | 話題のタグを見る

vsスイス戦評【世界へPR】


【戦評】


欧州の中でもかなりのレベル(8番目ぐらい)にあるスイスとの試合。
ランキングこそ上だが、スイスは能力の高い個も洗練された組織力も持っており、
日本が格下であることは否定できなかった。
ただお互いタイトルをかけた本気の試合でもあった為、
フレイはいなかったがベストメンバー。手を抜いた布陣ではなかった。
(※オーストリア戦で警戒したのか、セットプレーの対応などよく日本を研究していた。)

試合だが、
日本選手の多くは「勝ちたい」という気持ちより、
「肌で強さを感じたい(経験値を積みたい)」という気持ちが強かったのだろう、
立ち上がり日本が主導権を得るも慎重に進めようとする気配が感じられた。
遠藤、松井、俊輔のスペースを作り飛び込みパスを回す動きのみで、
崩そうとしたが、スイスは甘くなかった。
質の良い守備に捕まり、攻撃陣と守備陣の隙間を突かれてカウンター。
スイスの左サイドに強力な選手がいたこともあり、あっという間に2失点してしまう。
今までなら落ち込んで更に失点を重ねそうな場面。
だが、日本は十分なこれまでの戦い方に手応えが有り、自信を持ってプレーしていた。
日本はスイスクラスと戦う為の十分な努力とメンタリティを有していた。

連続失点後、数分もしないうちに日本はまた主導権を握り始める。
持たされて止めのカウンターを狙われていたという見方も出来るが、
ポジションチェンジ(動きによる崩し)を遠藤と松井に託して、
改めて右サイドに入った俊輔の身体の使い方が上手く、
加地もラインを高く裏に抜け出す体勢を取った為、
カウンターの主力になるマニャンの上がりを制限できるようになってきていた。

勿論パス回しは日本の方が優れているわけで、ピッチの6割程で日本の動きが活発になった。
右は五分五分になってきたので後は、左サイドなのだが…、
やはり駒野と遠藤の連携が上手く行ってないように感じた。
それは遠藤が俊輔ほど身体を上手く使えてなく溜めれないのもあったし、
駒野が攻守に迫力不足な面を見せていたからでもあるだろう。
(※トラップに時間が掛かって加速しきれない面が一番気になった。)

結局、前半は0-2というスコアで折り返すのだが、
個人的に(相手は格上なのだが)追いつけると思って楽観的になっていた。
時間が経つにつれスイスの守備は日本のボール回しについていけず、
稲本がフリーで前を向き、高く上がったラインの裏や両サイドに効果的なパスを出していたし、
受ける側の巻や松井の動きが非常にキレていた為だ。
日本の戦い方は確実にスイスを追い詰めていた。

後半スイスは、効いていたマニャンを下げ、バルネッタを投入する。
スイスの監督がどう考えたは不明だが、恐らくマニャンが故障しがちなことがあることと、
機能していない日本の左サイドを攻略して止めを刺したいという考えがあったのだろう。
また同時に、若手で有望な(ドイツW杯はスーパーサブの一人)マルガイラツを下げ、
蹴導がドイツW杯で気に入った(ここは関係ないかw)ヤキンを投入してきた。
ドリブルで一人で仕掛け、ファールを貰ってそのまま自分でFKを決める選手だ。
この場面ではマーゲラよりヤキンの方が怖い。
スイスのやる気を感じたが、すでに日本の術中にはまっていた気がする。
パスと運動量で勝る日本に付いて行こうとすればするほど、
スイスの選手は負荷と疲労で動けなくなっていった。

左サイドでフリーで受けた松井が半身を当てた後、軽く旋回、
堪らず手で止めてPKを獲得。俊輔がしっかりと決め反撃の狼煙をあげる。
徐々に徐々に日本がスイスを蝕む。
そして、俊輔のFK。闘莉王と中澤は事前に調べていたのだろうが、
効き足が頭の巻はチェックされていなかったのかもしれない。
俊輔の質の高いクロスに、DFを振り切った巻が飛び込み同点。
スイス側もヤキンが質の高さを見せていたが得点に結びつかず、
気付けば2-2の同点になっていた。
運動量の低下を補う為スイスはセレスティーニを投入。
だが一人の運動量だけでは他の選手をカバーできなかった。

日本はここで動く。個は高いが疲労のピークを迎えた松井を下げて山岸を投入。
コレを見てスイスも動く。
動けなくなったフォンランテンを下げ、右SBリヒトシュタイナーを入れる。
バルネッタのサポートと守備の安定を図ったのだろうがこの采配が勝敗を分けた。
リヒトシュタイナーもセレスティーニも左サイドから左右に切れ込む山岸を捕まえられず、
守備に安定をもたらす事が出来ず、駒野の上がりを促すことになった。
そして日本の逆転弾が生まれることになる。

スイスは堪らずスーパーサブのジュルーを投入。
そして日本は…何を思ったか、オシムの采配は、巻を下げて矢野…。
巻に比べると矢野は見劣りする。攻撃力は同等かもしれない。
だがハートや守備、駆け引きといった部分は「まだ」圧倒的に差がある。
この場面でテストであるw勝つことより、矢野の成長を選んだオシムはすごい。
数十秒後、ジュルーをマークできず、同点に追いつかれる矢野の姿があった…。

一時的にスイスが息を吹き返すが、やっぱ疲労はどうすることも出来ない。
空いているスペースを使い日本のパス回しが冴え続ける。
闘莉王、憲剛、山岸と自由に繋ぎ、憲剛のシュート、弾いて矢野の決勝点が生まれた。

4-3での勝利。次戦ったら同じようにいかないだろうが、
世界のサッカー界に十分すぎるインパクトを与えることが出来ただろう。
マッチメイクがかなり楽になるはずだ。
敗戦もあるだろうけど、日本が強化する為の準備が1つ整ったのではないかと思う。

そして矢野。この舞台で若い彼が伸びる為のモノが手に入ったのは大きい。
同じポジションでは、今回未招集の前田、
U-22の平山や森島といった面々が虎視眈々と座を狙ってくるだろうが、
死守して欲しい。それが日本の将来に繋がると思う。


【寸評】スイス8:日本6。

川口:5.0:存在感を見せられず3失点。1vs1は共に逆を突かれる。

中澤:5.5:競り負ける部分もあったが、スイス攻撃陣に完璧な仕事はさせず。
闘莉王:6.0:確信的な飛び出しで流れを呼び込む。失点の元になった分減点。
加地:5.5:右サイドを制圧できなかったが戦えることを示した。後半は楽になった。
駒野:5.0:ボールが快速から鈍行に乗り換えた。運動量による支援と3点目のクロスが救い。

啓太:5.5:カウンターを未然に防げず。徐々に質が上がる。もっとパスコースを消したかった。
稲本:6.5:個の力を見せつける。ロングパスの精度が高く、有利な展開を作った。
松井:5.5:(1A。)マニャンとの主導権争いで敗れるも、後半は左サイドで持ち味を見せる。
→山岸:6.5:中に外に切れ込み、疲れた相手に止めを指す動きを続けた。球離れも○。
俊輔:7.0:2得点1A。キック精度の高さを確かな得点に結びつける。高い集中力を維持。
→憲剛:--:採点無し。アピールしたい気持ちが決勝点を引き寄せた。
遠藤:5.0:鍛えた身体が世界に通じず。パス回しは流石だったが…。
→佐藤:--:採点無し。短い時間で良い判断は見せるが得点チャンスは巡ってこず。

巻:7.0:1得点(1A。)エリア内での判断力と積極性が光る。ライン攻防は負ける。
→矢野:6.0:1得点。「まだ」荒削りだがハートは見せる。失点と決勝点に絡む。

オシム:7.0:実も種もある采配。選手のテストと難敵相手の勝利を手繰り寄せた。
相手の動きに合わせて選手を送り出す「後の先」に圧倒的な深みを感じさせた。

オーバー。

by awi-syuwdow | 2007-09-13 15:45 | 日本代表  

<< 守備的MF論。【ベストな組合せ... オシムのサッカーは変化したのか... >>